大学生の本記録

その辺ににいる大学生の小説備忘録です。おすすめ度は5段階評価

ボックス!

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●あらすじ

高校教師の高津耀子は電車の車内でヤンキー達にやっかみをつけられ、トラブルに巻き込まれる。そこに、1人の少年が風のように出現し、ヤンキー達を拳で圧倒していく。

難を逃れた耀子は数日後の勤務で、あの時の少年は耀子の高校の生徒だということを知る。その少年は、ボクシング部1年の鏑矢義平。直接的な関わりは無かったが、耀子の授業担当クラスに在籍する木樽優紀の親友ということで接点を持った。

鏑矢のボクシングが腕前がかなりのものだと知った耀子は、優紀に連れられ鏑矢の試合を見に行く。圧倒する鏑矢。そして会場でボクシング部の監督と出会い、ボクシング部の顧問に就任する。

ボクシング部員全員と耀子、監督の沢木による、壮大な人間、青春、スポーツドラマである。

 

●感想

読み終わったあとの脱力感がもの凄い。何度も何度も心を揺さぶってくる。移動中のバス車内で涙を流してしまったほどである。

 

まず、百田作品は、下級者が上級者を目指し、追いつくか、追い越すかのパターン(影法師、ボックス)

ある苦難を抱えた無知者が有識者に知識を請うパターン(モンスター、プリズム)

というような構成が多い。そのため下級者や無知者が上級者、有識者教わるシーンが数多く、その度に懇切丁寧に指導しているため、整形や剣道の知識がない我々読者も想像しやすくなっており、非常に読みやすい。

 

ボックスも、優紀が鏑矢や沢木に指導を仰いでいることから、ボクシングに関する知識がなくともスラスラ読める点が魅力である。

 

また、題材が「高校の部活動」という多くの人が経験したことのある事象だということから、登場人物に共感できる点も多いように感じる。

 

また、鏑矢は常にどのような思考回路か読み取りづらい設定である。それに加えて、本作は耀子、優紀の視点のみでしか描かれていないこともあり、より一層鏑矢のキャラが引き立っている。百田尚樹の神業の一つと言えるだろう。

マスカレードナイト

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●あらすじ

東京都練馬区のマンションで、若い女性の遺体が発見された。その後捜査を進める中で、警視庁に密告状が届く。内容は、大晦日に高級ホテル「コルテシア東京」に犯人が現れるので、逮捕してほしいというものであった。

数年前の潜入捜査で、ホテルクラークとして奮闘した捜査一課の新田は、再びフロントに立つことになる。今回の指導係は堅物の氏原で、新田は接客をさせてもらえない。そんな中、いかにも怪しい客が幾度も現れる。

一方山岸尚美は、客の要望になんでも応えなければならない、コンシェルジュというポジション就いていた。仰天してしまうような要望にも応えなければならず、忙殺される。

お客様第一のホテル、犯人逮捕第一の警察、そして両者を翻弄する聡明な犯人。果たして悪者は捕まるのか。

 

●感想

マスカレードホテル同様、複数の楽しみ方がある。

一つ目は、ストレートにミステリを楽しむこと。しかし今回は登場人物も非常に多く、かつ犯行がトリッキーであるので、文章のみで理解するのがやや難しかった。ぜひ映画で見たいと思う。

二つ目は、コンシェルジュ尚美の活躍。日下部篤也、中根緑が持ち込む難易度の高い要望にも、鮮やかに対応する姿が非常に清々しい。薔薇が108本集まった花束のメッセージが「結婚」スイートピー花言葉が「別離、優しい思い出」ということも初耳だった。

三つ目は、新田、能勢達刑事の活躍。新田の洞察力、能勢の地道な捜査により、読者に読解のヒントを与えてくれる。

しかし最終的に全く想定していなかった黒幕登場し、唖然してしまった。非常に面白い一作。

マスカレードイブ

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●あらすじ

マスカレードシリーズ第二弾。警視庁によるコルテシア東京潜入捜査以前の、新田と山岸の物語。

大きく分けると、2人のバックグラウンドを描く章と、2人が間接的な接点を持つ事件の章に分かれている。そして、最後は、衝撃のシーンで終わる。

 

●感想

尚美のシーンは、率直にホテルマンとは、素晴らしい職業だと再認識し、かつプロの接客業として、どのような客にも真摯に向き合う姿が感服に値するものであった。

新田のシーンは、ストレートにミステリ小説を楽しむことができた。東野圭吾の手腕により、現場がありありと想像できるため、まるで事件の関係者になったような気分で読める。

そして、マスカレードイブ。交換殺人という手法を見抜く新田も、設定する著者も天才だと思った。

最後には長倉麻貴も登場し、マスカレードホテルとのつながりを見せる。まさに何かが起こる序章のような形で幕を閉じ、全てのパズルのピースが揃ったような感覚で、スッキリした終わりであった。

マスカレードホテル

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●あらすじ

東京で、不可解な連続殺人事件が発生した。いずれの事件においても謎の暗号が残され、殺害方法はそれぞれ異なっていた。

警視庁は、暗号のを解読し、次に事件が発生する場所は、都内の高級ホテル、「コルテシア東京」だと判明した。

警視庁の敏腕刑事、新田はホテルマンに扮装して捜査を開始。ホテル業務をこなしつつ、事件解読に奔走する。

 

●感想

面白い点は3点。

1点目は、言わずもがな重厚なストーリー展開。ホテルに来る客全員が犯人であるという可能性があり、彼らが起こすアクション全てに意識が持って行かれる。

2点目は、頻繁に利用しない高級ホテルを舞台にしていることで、非日常感を味わうことができる点。

3点目は、新田がホテルマンとして成長していく姿を見ることができる点。序盤こそぶっきらぼうな様相だが、徐々に板に付いて行き、客の1人である栗原からはホテルマンだと疑われないまでに成長した。

 

以上の点が非常に面白く、序盤から終盤までハラハラドキドキしっぱなしの作品である。

僕のメジャースプーン

 

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●あらすじ

主人公「ぼく」は、頭がよくて沢山の習い事をこなすふみちゃんに憧れを抱いている。クラスでもリーダー的存在であるが、特段仲の良い友達はおらず、1人でいることも多い。

 

「ぼく」やふみちゃんの通う学校は、代々小学四年生がうさぎの飼育をすることになっている。ふみちゃんはうさぎを非常にかわいがり、クラス内で餌やり当番を決めているにも拘らず、彼女は毎朝早くに登校し、うさぎの様子を確認していた。

 

しかしある朝、うさぎ達が瀕死の状態で横たわっていた。第一発見者であったふみちゃんはPTSDに陥ってしまう。

 

主人公「ぼく」は、犯人と直接対峙し、数人しか使えない、ある「能力」を使い、復讐することを決意する。

 

●感想

「ぼく」の勇気、秋山先生の優しさ、ふみちゃんに対する同情など、涙腺が緩むシーンが数多くあり、涙なしでは読めない作品である。

 

秋山先生と「ぼく」の対話シーンが多く、先生から直接自分に語りかけられているかのような錯覚に陥る。

 

秋山先生は「ぼく」心理クイズのような問いを沢山投げかけており、思わずページを繰る手を止めて考えてしまった。

 

ストーリーも楽しみながら、秋山先生から教わる知識も身につけることができる、一石二鳥のような作品であると感じた。